技術は好きだった。
データも、機械学習も、アーキテクチャも。

物事をメカニズムから理解することも好きだった。
ミクロ経済学も、行動経済学も、マーケティングも。

感情もメカニズムで理解しようとしていた。
期待と現実のギャップで生まれるものだと、昔から気づいていた。
何にも期待しなければ、ネガティブな感情に左右されない、極めて合理的な人生を送れると考えていた。
何かを失っていた。

技術を極めようとしていたら、本来見えないはずのものまで見えてしまった。
メカニズムで理解しようとしていた。理解できなかった。
自分の気持ちに素直になれなかったからだった。

光には惹かれていた。光からもらった温度をシャッターで残そうとしていた。
静かなひとときが好きだった。空気に漂っている言葉にならないものを大切にしたかった。

物事をもっと知りたくなる自分も、感情を理解できなくて苦しんだ自分も。
もっと素直に生きていきたい自分も。
不完全な自分を受け入れたい自分も。
全部本物だった。