ファーストキャリアの話
私は仕事でWeb系のエンジニアをやっている。
ソフトウェアの開発以外に、プロダクトマネジメント、データ基盤、AIの開発にも関わっている。
この仕事についた最初のきっかけは、大学院でAI系の研究をしていたので、就職ではAIを活かせる業種と職種を探していたことだった。
クリエイティブ性の高い広告というもの自体には元から興味があったし、広告主・メディア・消費者のデータを取り扱えるところにも魅力を感じていたので、デジタル広告に関わる会社を中心に就活していた。
アメリカで言えばシリコンバレー、日本で言えば渋谷のような文化があって、渋谷系のエンジニアに憧れもあったので、つよつよエンジニアの多い渋谷のIT企業に新卒として入社した。300人弱の東証一部上場企業(現在はTOBによる上場廃止)。
AI枠のエンジニアとして入社したが、他の同期は全員ソフトウェアエンジニアだった。 最初は同期と比べてエンジニアリングの実力が圧倒的に足りなくて、OJTの方に何度も頭を抱えさせてしまった。
必死に食らいついて、色々乗り越えて今に至っている。
その事業部では、多種なデータを触ったり、ロジックを作ったり、ABテストで検証したりと、ファーストキャリアとしてはすごく楽しい時間を過ごせた。
エンジニアみんなの志向性
私みたいな、アプリケーションもAIも開発するポジションは少し特殊で、その枠のエンジニアの人数がそもそも少ない。そのおかげで早いうちから学生や中途の方との面接・面談に関わるようになり、他の技術者の考え方や志向性を収集できていた。
みんなそれぞれ色んなモチベーションで仕事に向き合っていることも見えてきた。
技術力を極めていきたい人、早くマネジメント職について組織を作りたい人、ワークライフバランスを重視する人。色んな話を聞いてきた。
その中には、私が一生現場にいても追いつけないような技術力を持つ人たちや、仕事以外の生活で幸せに過ごしている方々が多かった。
私はどちらかというと、楽しいことをやりたい、それが結果的に事業と会社の成果にコミットできる形まで落としたいと思っている。
その「楽しいこと」をより言語化すると、自分の好奇心を満たすこと、ものづくりへの達成感、信頼されることへの責任感、といったことになる。
ワークライフバランスの観点では、「ワークインライフ」という考え方をしていて、ワークをライフの一部として捉えている。そのワークを楽しめるなら、それ以上のことはないと思っている。
もちろん仕事以外にもやりたいことは色々あるので、その時間は確保しながら動く前提ではある。
幸いなことに、信頼関係のある環境に恵まれ、やりたいことをやらせてもらえていて、それなりに評価もされている。尊敬できる人たちと一緒に働けて、学びの多い日々を過ごしている。
新しい時代で考えているエンジニアリングの極意
若手の悩み
今年に入ってから、このIT界隈でひとつ大きな変化が起きていた。それはAIエージェントだ。
去年までのLLMボットと比べて、自律的にタスクを遂行する能力が遥かに向上し、開発のプロセスが大きく変わってきた。
今年新卒で入社したエンジニアですら、コードをほとんど書かなくなっている。
この激しい変化の中で、後輩からの相談も増えてきた。これからWebエンジニアという職種はどうなるのか、自分たちのキャリアはどう築くのか。
いわゆる第4次AIブームの真っ最中に、未来への不確実性は高まっていて、若手の不安はすごく理解できる。
コードを書く作業が減っていくのは、もはや間違いないでしょう。自然言語でビジネス要件を満たすものが作れるようになってきていて、運用までの自動化も近いうちに実現できそうだ。
「着想」という競争優位性
各企業のコモディティ化と差別化は両方同時に進みやすくなっていく。企業の競争優位性が問われる一方で、エンジニア個人としての競争優位性をどこに置くかも考える必要がある。
私は一言でまとめると、「着想」だと思っている。
これは、自社サービスへの理解、市場に対する洞察力、他社への調査力に基づいて、本当に求められるものに対して、どんな形のものをどう届けるかを考える能力のことだ。
エンジニアの語源は、ラテン語の「ingenium」。
ingenium は「生まれ持った才能」「創意工夫」「巧妙な装置」といった意味を持つ言葉でした。これが中世ラテン語で ingeniator(巧妙な装置を考案する人)となり、古フランス語の engigneor を経て、英語の engineer になっています。
ーーClaude
つまり、エンジニアの本質は「何かを作る人」ではなく、「巧妙な装置を考案する人」だった。時代の流れの中で、Webエンジニアに求められる巧妙な装置がソフトウェアになっただけの話。
私自身は複数のポジションを兼任していて、企画から実装まで幅広く関わっている。その中で、AIをいかにうまく使えるかで差が大きく出ていると感じている。
私の書いたテックブログもそれを実現するための1つのプラクティスだった。
最強の仲間を作る — Claude Codeをプロダクト開発のパートナーに育てた話
ルールベースの作業や、ある程度自律的にこなせる仕事は、できる限りAIに任せた方が楽だし、人間は人間にしかできない仕事に集中した方がいい。
エンジニアの話に戻ると、最近はGTM(Go To Market)エンジニアやFDE(Forward Deployed Engineer)のような新しいポジションが注目されている。
私からすると、これらの本質は全部同じだ。市場を理解する、クライアントのニーズを捉える、自社サービスの強みを活かす。これはコモディティ化を防ぐための着想であり、エンジニアに求められているアウトカムの前提ではないか。
パソコンに向き合う日々はしばらく変わらない。変わるのは、その向き合い方と、何を大切にするかだ。
時代に順応しながらも、自分らしい楽しい日々を過ごし続けることを目指している。
